先生も糖尿病やで といわれているらしい、というのは気づいていた。学生時代から13号がぴったりの肥満体形である。ケーキバイキングで娘婿に“負けた”と言われて反省する食いしん坊だ。だが糖負荷試験をすると正常型で今のところ糖尿病は発症していない。
去年の暮にリブレという名前の器械が入った。コイン大のセンサーを上腕に貼り付けておくと2週間の血糖の動きが連続線で見える。早速つけたのが金曜の午後、土曜から洲本温泉にいく予定があったので内心緊張しつつ出かけた。夕食は淡路島特産のフルコースである。心配しつつ完食したが血糖は140を越さずほっ。温泉につかって就寝、翌日は朝食バイキング、血糖の動きを眺めてはデザートまで食べきった。体重は気になったが血糖はあがらないんだと妙な自信をもって帰宅した。
あけて月曜日、午前診を終え2時過ぎに遅めの昼食をとった。手作りの野菜メインの一皿である。食後に大好きな柿を1個食べて10分、なんと血糖は208まで上がるではないか。ショックを隠して午後の診察に入った。
その後100人近い方の血糖曲線をみて えさでなく食事を食べよう というのが私の結論であった。
血糖の正常値はいくらか?ときかれることが最近多い。簡単な質問 と思われそうだが実は大変に難しい。常にインスリン注射が必要な人や病気の時、妊娠中などは血糖を測る機会が多くデータがあるが 病気でなく元気に働いている人の血糖(分単位で大きく動く)のデータはほとんどないのである。高血糖が動脈硬化を促進する、血糖のスパイク(急激な上昇)は血管をいためる ということは動物実験で証明されている。では人の血糖の動きをどこまで“正常”と線引きできるのか。
糖尿病の食事療法の考え方はカロリーを抑えることから始まり 次に栄養素のバランス 食べる時間(時間栄養学) 食べる順番 食物繊維の話などが加わってきた。しかし今まで 食べているのが人であること の意味は取り上げられてはいない。大脳が大きく発達して心の動きが体の動きを左右する人にとって食べる心は 消化器で調整される血糖の変動の基盤であるように思える。
食べることへの要求(食欲)は人の基本的な生きる要求である。日々の暮らしに不満がたまってきた時食べることの充足感で代用させると切り抜けられることがある。食事を満足して楽しめることには食後の血糖スパイクを抑える力があるのではないだろうか。
自分の望む体重を維持する量を3回の食事で楽しんで食べること、そしてちょっと多いと思ったらすぐに少しでも体を動かすことが血糖の変動を穏やかにするには役立ちます。
孤食はえさになりやすいハイリスク食です。一品ずつ持ち寄って仲間で一緒にしっかりしゃべりながらお昼を食べて さあ花でも見に散歩しましょうか?それとも九条守ろうのビラ配りにいきましょうか?(血糖の正常範囲 80から140 参考値)