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糖尿病の話をしよう 第2回

インスリンの作用不足から

 

体のエネルギー回路で、エネルギー源である血糖を細胞内に取り込み血糖を下げる働きは、インスリンシステムが担っています。インスリン作用が不足すると血糖が上昇し、糖尿病になります

1型糖尿病は数日から数年の経過で膵β細胞が消失し、インスリンがつくられなくなる病気です。ウイルス感染や免疫異常が原因と考えられ、何歳でも発症しますが、小児から思春期が中心です。病態が完成する(膵β細胞が消失する)と、インスリン欠乏状態となり、生きるためにインスリン注射が必要です。頻回におよぶ注射や、ポンプでインスリンの皮下注射をする、あるいは膵移植をします。普通は血糖に応じて自動的に分泌されるインスリンを、自分で血糖を測り必要量を考えて注射するのが1型糖尿病の日常です。自分に必要なインスリンの量と使い方を把握し、非常時に伝える力をつけておきたいです。

日本では、ほとんどの糖尿病は2型糖尿病です。インスリンの出が少ない、遅い、インスリンの効果が悪い、等のたくさんの要因が組み合わさった状態と言えます。欧米と比べて日本人はあまり肥満していなくても糖尿病になります。糖尿病になりやすい体質は遺伝します。

インスリンの作用欠乏(インスリンが十分に働かないこと)はゆっくりと進むため、体が順応して高血糖に気づかず、重篤な合併症がでてから受診される方がたくさんおられます。中年の病気と思われていますが、最近は若者にも増えています。健康診断や体調不良で受診したときに尿糖がでていたら、糖尿病の検査を受けて健康な自分を守ってください。

(2019年7月10日掲載)

医師 井上朱實

糖尿病のはなしをしよう 第1回 

糖尿病で何がおきている?】

人は食物を消化・吸収してエネルギーを得ています。エネルギーは主に血中の糖分という形で全身を巡るため、血糖は常に細胞が使いやすいレベルに調整されています。

人体はさまざまな刺激で血糖を上昇させますが、抑える仕組みはインスリンを中心としたシステムしかありません。このシステムの働きが鈍るとエネルギー回路の動きも鈍化し、細胞で利用できない糖分が余って血糖が上がってきます。

急なエネルギー摂取で全身の細胞に多量の糖分が流れ込むと、発電装置(ミトコンドリア)が働き過ぎて細胞を傷めるので、細胞は糖分の取り込みを抑えます。その結果血糖が上がります。

血糖が上がると膵β細胞からインスリンが血中に出され血糖を下げます。食物を摂ると腸からインクレチンが出て、インスリンをたくさん出すよう応援していますが、その力は緊張(ストレス)がかかると低下します

筋肉細胞は糖をよく消費するので、質の良い筋肉を維持し、しっかり使うとエネルギー回路が潤滑になります。糖尿病はエネルギーシステムの変調であり、血糖は稼働状況の指標といえます。

地球上の生物はエネルギーレベルの調整についても24時間の日内変動や季節・年の周期が遺伝子に組み込まれています。(時間遺伝子等)。

お日さまタイムにあわせた休養と活動、メリハリのある食生活を楽しんで、仲間と一緒に体を動かすことを基本に暮らしましょう。そのうえで、ご自分のエネルギーシステムの弱点に合った薬物治療ができたらいいですね。(2019年7月3日掲載)